マイホームを譲渡(売却)した場合の税務上の特例について
2014.10.06
京都 西京区の税理士 渡利裕亮です。
今回、次回とマイホームを譲渡(売却)した場合の税務上の特例について、ご紹介致します。
マイホームは税務上「居住用財産」と定義され、その範囲は以下①~④になります。
①自分が住んでいる家屋
②自分が住んでいる家屋とその家屋と共にある敷地等
③災害によって滅失した家屋の敷地等
④住まなくなった家屋とその家屋と共にある敷地等
※③④については、住まなくなった日から3年目の年の12/31までに売ること等一定の要件を満たす必要があります。
なお、税制優遇を受ける目的など、一時的な目的で入居したと認められる家屋や別荘など主に趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋は「居住用財産」から除かれます。
通常、建物(家屋)や土地(家屋の敷地)を譲渡すると、
「土地、建物」などの資産を譲渡することによって生ずる「譲渡所得」として、他の所得、例えば事業所得や給与所得などとは合計せずに、個別に課税(分離課税制度)されます。
また、譲渡により生じた損失(譲渡損失)は事業所得や給与所得など他の所得と相殺(損益通算)することはできません。
譲渡所得は、 収入金額-(取得費※1+譲渡費用※2)-特別控除額※3=課税譲渡所得金額
※1 土地・建物の購入費用などの合計額から売却時までの建物の償却費相当額を差し引いた金額
※2 仲介手数料、印紙代など売却のために直接かかった費用
※3 マイホームの譲渡、収用などにより土地・建物を譲渡した場合で、一定の要件を満たす場合には、特別控除の
適用があります。
により計算され、税額は所有期間に応じて以下のとおり計算されます。
(1) 長期譲渡所得の税額(売却年の1/1現在において所有期間が5年超の土地・建物の譲渡の場合)
課税長期譲渡所得金額×20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)
(2) 短期譲渡所得の税額(売却年の1/1現在において所有期間が5年以下の土地・建物の譲渡の場合)
課税短期譲渡所得金額×39.63%(所得税・復興特別所得税30.63%、住民税9%)
ただし、マイホームを譲渡(売却)した場合には、売却代金を新居の資金に充てたりしなければならず、その売却代金を自由に処分できません。
したがって、マイホームの譲渡による所得には税負担できる余力がないため、税負担を緩和するよう、一定の適用要件を満たす場合には、以下の5つの特例を受けることができます。
譲渡により利益(譲渡益)が出たとき
①マイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
所有期間に関係なく譲渡益から最高3,000万円まで控除ができる特例
②所有期間10年超のマイホームを譲渡した場合の軽減税率の特例
譲渡益6,000万円以下に係る税率が14.21%(所得税・復興特別所得税10.21%+住民税4%)となる特例
③所有期間10年超の特定のマイホームを買い換えたときの特例
特定のマイホームを譲渡して新たにマイホームを取得した場合において、譲渡益が生じたときは、一定の要件の
もと、譲渡益に対する課税を新マイホームを将来譲渡したときまで繰り延べられる特例
(譲渡益が非課税となるわけではありません。)
※①と②の特例は併用して適用を受けることができます。
譲渡により損失(譲渡損失)が出たとき
①マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
旧マイホームを売却して新マイホームを取得した場合において、旧マイホームを売却して損失(譲渡損失)が生じ
たときは、譲渡損失を他の所得と損益通算でき、損益通算しきれない譲渡損失は翌年以後3年間にわたって繰越控除
できる特例(旧マイホームに係る住宅ローンがなくてもOK)
②特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
住宅ローンのあるマイホームを売却して損失(譲渡損失)が生じたときに、一定の譲渡損失を他の所得と損益通算
でき、損益通算しきれない譲渡損失は翌年以後3年間にわたって繰越控除できる特例
(新マイホームに買換えなくてもOK)
上記5つの特例の適用要件、税制優遇の効果はまた詳しく触れていきたいと思います。